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シン・キクラゲ144㎥栽培室の環境制御

「シン・キクラゲ」:白キクラゲの美容成分(高保湿多糖・フコース・ビタミンD₂など)を、共生菌いらずの白いキクラゲに“後付け”する技術を確立。 改良株を純粋培養し成分強化した独自菌床で栽培、収穫シン・キクラゲの遺伝子を持つ菌を培養、栽培する事で「シン・キクラゲ」=“育てやすさ”と“高機能”の両立を実現しました。

福知山栽培工場:各成長期に合ったベスト環境制御プロセスの考察

Ver250903K.F Confidential

 

シン・キクラゲ 成長ステージ別最適環境

成長ステージCO₂濃度 (ppm)温度 (℃)湿度 (%RH)風 (換気)照度 (lx・時間)
菌糸伸長期1,000~2,00024~2865~75無風~弱風(2h/20m³/h)0(遮光)
菌糸熟成期800~1,50025~2770~75微風(4h/30m³/h)0(遮光)
原基形成期500~80023~2685~90中風(6h/50m³/h)200~500 lx(6~10h)
子実体成長期600~1,20022~2585~90中~強風(連続/60m³/h 以上)300~700 lx(8~12h)
収穫・維持期800~1,20022~2580~85中風(断続的)200~500 lx(6~10h)

#2:144㎥栽培室(本件)の環境調整の考察

直径10cm長さ20cmの白いキクラゲ菌床を144立方メートルの栽培室で4,000本栽培

W:9m × D:6.4m × H:2.5m =144㎥

各成長期に合った環境制御プロセスの考察

キノコ菌は菌床で栽培しますが、大量のCO2を排出します。
この理由を下記に説明します。
菌床栽培において キノコ菌(担子菌類の菌糸)が成長する際にCO₂を発生させるメカニズム を、化学的な反応の流れとして整理。

1. 基本原理:呼吸による有機物の酸化分解

キノコ菌は植物のように光合成はできず、徹底した従属栄養生物です。
菌床内の炭水化物やリグニン・セルロースなどを分解し、呼吸(有酸素呼吸・嫌気呼吸) によりエネルギーを得ます。

一般的な有酸素呼吸の反応式

C_6H_{12}O_6 + 6 O_2 → 6 CO_2 + 6 H_2O + エネルギー(ATP)
  • 菌床中のデンプン、セルロース、ヘミセルロースなど → グルコースなど単糖 に分解
  • それを解糖系 → クエン酸回路(TCA回路) → 電子伝達系で酸化
  • 最終的に CO₂と水 が生成される

2. 各過程でのCO₂発生ポイント

(1) 酵素分解段階(菌糸が基質に作用)

  • セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、リグニナーゼ、アミラーゼなどの分解酵素を分泌
  • 複雑な高分子(セルロース・リグニン・デンプン)を単糖(グルコース等)に分解
  • この段階ではまだCO₂はほぼ発生しないが、分解基質が呼吸に使える形に変換される

(2) 解糖系(Embden-Meyerhof-Parnas経路)

  • グルコース (C₆H₁₂O₆) → ピルビン酸 (C₃H₄O₃) に分解
  • ATP 2分子とNADHが生成
  • この段階ではCO₂はほぼ出ない

(3) ピルビン酸脱炭酸反応

  • ピルビン酸 → アセチルCoAに変換
  • このとき CO₂ 1分子/ピルビン酸1分子 発生
  • ここがCO₂発生の最初の大きなステップ

(4) クエン酸回路(TCA回路)

  • アセチルCoAがオキサロ酢酸と結合し、クエン酸に → 一連の酸化還元反応でATPとNADH生成
  • 各サイクルで 2分子のCO₂ が発生
  • したがって、グルコース1分子からTCA回路を経て 合計6分子のCO₂ が放出される

(5) 電子伝達系(酸化的リン酸化)

  • NADHやFADH₂から電子を受け取り、最終的に酸素を還元 → 水(H₂O)を生成
  • この段階ではCO₂は出ないが、大量のATPを得る

3. 嫌気的代謝のケース(酸素不足時)

菌床が過密・換気不十分だと、局所的に嫌気状態になり:
  • ピルビン酸 → エタノール + CO₂ (アルコール発酵様)
  • ピルビン酸 → 乳酸 (乳酸発酵)
    • などが起こることがある。
👉 そのため、換気不足の栽培室ではエタノール臭が発生する場合がある

4. 成長過程とCO₂発生の関係

  • 菌糸伸長期:基質分解と呼吸が活発 → CO₂放出が最大
  • 菌糸熟成期:代謝安定、発生量はやや低下
  • 原基形成期CO₂濃度の低下がトリガーになる(CO₂が多いと原基形成が抑制)
  • 子実体成長期再び呼吸活発化 → CO₂発生量が増加する

5. まとめ

菌床栽培でのCO₂発生は、
  • 菌糸が基質中の糖を分解 → 解糖系 → ピルビン酸脱炭酸 → TCA回路での酸化
    • という一連の呼吸反応で生じます。
      特に ピルビン酸→アセチルCoATCA回路 がCO₂発生の主要ステップです。

A:栽培で排出されるCO2濃度

各成長期と収穫を4クールでの排出CO2濃度、栽培最適値表
クール成長期推定CO2発生量 (L/h)無換気での濃度上昇 (ppm/h)推奨室内CO2 (ppm)推奨換気量 (m³/h)
1〜4菌糸伸長期522.03622.01500483.0
1〜4菌糸熟成期313.02173.01100460.0
1〜4原基形成期626.04346.06502721.0
1〜4子実体成長期1043.07243.09002173.0

人体に影響を及ぼすCO2濃度

人体に影響を及ぼす二酸化炭素(CO2)濃度は次の通りです:
  • 400~1,000 ppm:通常の室内空間のCO2濃度。通常は健康上の問題は生じない。
  • 1,000~2,000 ppm:不快感や集中力の低下が生じることがある。
  • 2,000~5,000 ppm:頭痛、眠気、集中力の低下、不快感、増加した心拍数や軽度の吐き気を引き起こす可能性がある。
  • 5,000 ppm以上:これは労働安全衛生基準での作業環境としての許容限界濃度です。これを超えると重度の健康障害のリスクが高まる。
  • 40,000 ppm以上生命に危険を及ぼす可能性があり、数分以内に意識を失うことがある。
我々が日々生活する外気のCO2濃度は概ね420ppmです。
排出されるCO2濃度:前提条件がないと厳密計算はできないため、以下の保守的な仮定で「排出CO₂量(推定)」「無換気での濃度上昇(ppm/h)」「期ごとの最適目標値(ppm)」「その目標を保つための必要換気量(m³/h)」を、4クール(4回の収穫)×各成長期で整理。
読み方
  • 推定CO₂発生量 (L/h):4,000本全体が1時間に発生させるCO₂量の推定
  • 無換気での濃度上昇 (ppm/h):144 m³の室内にCO₂がどれだけ増えるか(参考)。この値が大きいほど、換気が不可欠
  • 推奨室内CO₂ (ppm):各期の目安(中点)。レンジは下の「推奨レンジ」を参照
  • 推奨換気量 (m³/h):外気420 ppm前提で、目標ppmを維持するために必要な定常時の排気量(=給気量)
推奨レンジ(白いキクラゲ)
  • 菌糸伸長期: 1,000–2.000 ppm(目安中点 1500 ppm)
  • 菌糸熟成期: 800–1.500 ppm(目安中点 1100 ppm)
  • 原基形成期: 500–800 ppm(目安中点 650 ppm)
  • 子実体成長期: 600–1.200 ppm(目安中点 900 ppm)
白いキクラゲ環境表(CO₂/温度/湿度/風/照度)(原基期は低CO₂がトリガー)
成長ステージCO₂濃度 (ppm)温度 (℃)湿度 (%RH)風 (換気)照度 (lx・時間)
接種~菌糸伸長期1,000~2,00024~2865~75無風~弱風(2h/20m³/h)0(遮光)
菌糸熟成期800~1,50025~2770~75微風(4h/30m³/h)0(遮光)
原基形成期500~80023~2685~90中風(6h/50m³/h)200~500 lx (6~10h)
子実体成長期600~1,20022~2585~90中~強風(連続/60m³/h 以上)300~700 lx (8~12h)
収穫・維持期800~1,20022~2580~85中風(断続的)200~500 lx (6~10h)
栽培照明については別途検討とします。
計算に用いた主な仮定(透明性のために明記)
  • 菌床形状:直径10 cm × 長さ20 cmの円柱 → 体積 ≈ 1.571 L/本
  • 湿潤かさ密度:0.83 kg/L(おが粉主体ブロックの典型域)→ 約1.30 kg/本
  • 総菌床質量:1.30 kg/本 × 4,000本 = 約5,200 kg
  • 室内容積:144 m³(= 144,000 L)
  • 外気CO₂:420 ppm(郊外の目安)
  • CO₂発生速度(白キクラゲ、保守的中庸値)
    • 菌糸伸長期:0.10 L/kg・h
    • 菌糸熟成期:0.06 L/kg・h
    • 原基形成期:0.12 L/kg・h
    • 子実体成長期:0.20 L/kg・h
(食用担子菌の文献域を踏まえた保守的レンジの中点相当。実機では菌床配合や温度で上下します)
  • 換気量の算出:定常質量収支より

現場での使い所(ポイント)

  • 表の**「無換気での濃度上昇 (ppm/h)」が大きい* → 連続換気+局所排気の必要性が高いサイン
  • 原基形成期はレンジが低い(500–800 ppm)。この期だけ換気量を増やす or CO₂希釈運転に切り替えるのがコツ
  • 子実体成長期は再び代謝が上がるため、CO₂管理と加湿・送風のバランス調整が歩留まりに直結
4クールの意味:1菌床で4回の収穫が出来る想定
キノコの「クール(flush, cropping cycle)」とは、1つの菌床から子実体を発生させ、収穫し、次の発生を待つサイクルを指します。
🔹 1クールの流れ
  1. 原基形成 → 子実体発生 → 成長 → 収穫(数日〜2週間程度、種類や条件によって変動)
  1. 収穫後、菌床にまだ栄養分が残っていれば、水分や温度・CO₂条件を再調整することで 再び原基が形成され、次の子実体群が出てくる。
🔹 白いキクラゲの場合
  • 菌床1本から 複数回の発生(flush) が可能
  • 一般的には 3〜4回程度(施設条件や菌床の充実度による)
  • 回数を重ねるごとに収量は減少(1クール目 > 2クール目 > 3クール目 > 4クール目…)
  • 最終的に栄養が枯渇し、雑菌リスクも高まるため廃床する
🔹 まとめ
  • 「4クール栽培」とは、1菌床から4回の収穫を得る設計を意味します
  • したがって「4000本×4クール」なら、最大で「延べ16,000回分の収穫チャンス」があるイメージです
  • ただし実際には後半のクールでは収量が落ちるため、総収穫量は1クール目の4倍にはならない点に注意が必要です
使い方のヒント
  • 例えば「1菌床あたり累計400g」が実績なら、各クールの目安は
    • 1st ≈ 180g
    • 2nd ≈ 120g
    • 3rd ≈ 72g
    • 4th ≈ 28g
  • 実際は品種・培地配合・温湿度やCO₂管理、洗い出し(リハイドレーション)のうまさで変動します。
  • もし実測データ(各クールの重量ログ)があれば、その分布にフィットさせて自社プロファイルを算出し、収量予測やROI表に直結できます。必要ならテンプレを用意します。
収量割合%
1st Flush45
2nd Flush30
3rd Flush18
4th Flush7

B:各期の最適CO2濃度について

各成長、収穫期に最適なCO2濃度を維持するために Pana. FY-40MSUSによる吸気1箇所 、Pana. FY-190CG1 シロッコファン4台で排気する場合の適切な運転制御について
「各期の最適CO₂」を維持するための、実務向けの運転制御案をまとめました(関西=60Hz想定。50Hz域の数値も括弧で併記)。
前提(機器の公称性能)
  • 吸気:Panasonic 有圧換気扇 FY‑40MSU3
排気時 3020 m³/h・給気時 3100 m³/h(60Hz。50Hzは 2590/2650 m³/h)、消費74.5 W(60Hz)。静圧–風量曲線あり。
  • 排気:Panasonic ミニシロッコ FY‑19CG1 ×4台
風量 931 m³/h(60Hz, 1台)〔50Hz: 947〕、消費143 W(60Hz)、強・弱速調可能、適用ダクト径φ200、適用スイッチ FY‑SW81W。 (Panasonic Corporation, Yahoo!ショッピング)
  • 風量コントロール(推奨):単相100V 有圧換気扇用 FY‑SCS05(70–100%可)をFY‑40MSU3に適用。 (Panasonic Corporation)
60Hz域の合計能力目安
吸気:FY‑40MSU3 = 3100 m³/h(SCS05で2170–3100調整)
排気:FY‑19CG1 = 931×4=3724 m³/h(段数: 1台=931 / 2台=1862 / 3台=2793 / 4台=3724)
必要換気量(CO₂目標を守るための目安)
4000本(直径10cm×長さ20cm/本、総質量≈5.2t想定)時の発生量から逆算した必要換気量(144 m³室)。
  • 菌糸伸長期(目標1500 ppm):≈ 480 m³/h(≈3.35 ACH)
  • 菌糸熟成期(目標1100 ppm):≈ 460 m³/h(≈3.20 ACH)
  • 原基形成期(目標650 ppm):≈ 2720 m³/h(≈18.9 ACH)
  • 子実体成長期(目標900 ppm):≈ 2170 m³/h(≈15.1 ACH)
(※モデル計算。現場の発熱/温度で上下します)
運転制御の考え方(CO₂+差圧の二重制御)
  • CO₂制御:各期の**目標値±ヒステリシス(±50 ppm)**で段制御+時間比例(デューティ)制御。
  • 差圧制御:室内を−2〜−5 Paの微負圧に保つ(外気汚染・胞子逆流の抑制)。
→ 排気合計 ≧ 吸気合計(5〜10%多め)を基本に、差圧センサーで微調整。
期別の具体的ステージ例(60Hz想定)
S=FY‑40MSU3、E=FY‑19CG1。Eは“強/弱”切替+ON/OFF。SはFY‑SCS05で70–100%)
1) 菌糸伸長期(1500 ppm) 必要≈480 m³/h
  • 目安:S=OFF、E=1台(弱 or デューティ30–50%)
  • CO₂>1550ppmが5分継続 → E1 強 → E2 弱まで段上げ
  • CO₂<1450ppmが5分継続 → 段下げ(Eデューティ↓)
※流量が過大になりやすいので**時間比例制御(例:周期5分、最小ON60秒)**で微量換気にする。
2) 菌糸熟成期(1100 ppm) 必要≈460 m³/h
  • 目安:S=OFF、E=1台(弱/デューティ40–60%)
  • トリガは伸長期と同様(±50 ppm、5分判定)
3) 原基形成期(650 ppm) 必要≈2720 m³/h(高換気)
  • 目安:S=85–100%(≈2630–3100)、E=3台 強(2793)
→ 排気>吸気をわずかに確保(微負圧)。
  • CO₂>700ppm(5分)→ E=4台 強
  • CO₂<600ppm(5分)→ S=80–85%またはE=3台 強→2台 強+1台 弱に落とす
4) 子実体成長期(900 ppm) 必要≈2170 m³/h
  • 目安:S=75–85%(≈2320–2630)、E=2台 強(1862)〜3台 強(2793)
  • まず S=80% + E=2台 強で開始 → CO₂>950ppm(5分)でE=3台 強
  • CO₂<850ppm(5分)→ S=75% or E=2台 強(デューティ80→60%)
50Hz地域のとき:S満流量が2650 m³/hなので、原基期はS=100% + E=3台 強(必要に応じ4台)を基本に。数値は上の段替えより一段高めを目安に。

実装メモ

  • 保護:モータ保護のため最小ON/OFF 60秒以上。頻繁な再起動は避け、5分周期の時間比例を推奨。
  • センサー:CO₂は上下2点(例:0.6 mと1.5 m)、移流撹拌用の循環ファンを併用。
  • 差圧:給気/排気のバランスが崩れたら、差圧優先でS or Eを微修正(−2〜−5 Paに収める)。
  • シャッター/逆止:逆流防止を必ず設置(電気式 or 重力式)。
  • 周波数:地域の50/60Hzで公称風量が変わるため、初期段設定は地区に合わせて1段補正。

C:菌床を最適に栽培するための湿度

加湿器(霧太郎 KNC3000)2台により室内の湿度は、何%程度に設定するのがベストか?吸気、排気装置も作動している条件
吸排気が動いている前提で、白いキクラゲ(Tremella)の各期におすすめの室内相対湿度(RH)目標と、霧太郎 KNC3000×2台の運転ポイントをまとめます。
期別の最適湿度(目安)
フェーズ目的推奨RHレンジ推奨セット値(中心)
接種〜菌糸伸長期基質内での菌糸定着・伸長65–75%70%
菌糸熟成期菌糸充実、汚染抑制70–75%72%
原基形成期低CO₂+高湿で原基誘導88–92%90%
子実体成長期(前半 2–3日)幼菌の乾燥防止90–95%92%
子実体成長期(後半〜収穫)形状安定・雑菌抑制85–90%88%
コツ:原基~成長初期は乾かさない、仕上げ期はびしょ濡れにしない。連続して96%超が続くと結露・細菌斑のリスクが上がります。
霧太郎 KNC3000(2台)の運転・制御の考え方
吸気(FY‑40MSU3)・排気(FY‑19CG1×4)を使うと外気で湿度が上下するため、湿度はCO₂制御と連動させるのが実務的です。
1) 基本制御(PID or 2段+デューティ)
  • RH目標に対しヒステリシス±2%RH(原基/幼菌は±1%RH)
  • 2台は交互デューティ(例:片方を基準、もう片方は+10–20%の追従補償)でオン/オフ回数を分散
  • 最小ON/OFFは60秒以上(頻繁な断続で霧化体を痛めない)
2) 換気に対するフィードフォワード
  • 排気段が上がる(E台数↑ or 強運転)ほど加湿出力を前倒しで+10〜30%
  • 吸気Sが上がる(乾いた外気流入)ときも同様に一時的に+10〜20%
  • 逆にCO₂低換気モードでは霧量を通常に戻す(過湿回避)
3) 露点マージン管理(結露対策)
  • 室温に対して露点差ΔTdp=+2〜+3℃を目安に維持
    • 例:室温24℃なら露点21〜22℃相当(表計算や露点センサーで監視)
  • 壁・天井・ダクト表面温度が室温−3℃以下になる箇所があると結露しやすい→その範囲ではRH目標を2–3%下げるか断熱を追加
4) ノズル配置・運転の実務
  • 霧の直当てを菌床へ禁止(水滴化→細菌リスク)
  • できれば**上流側(吸気寄り)**に配置し、循環送風で室内に均一分散
  • 2台は対角に置き、微角度の首振り(可能なら)でホットスポット回避
  • 停止後の残霧排出:原基/幼菌期は停止直後に排気強制はしない(乾き過ぎ防止)。仕上げ期は微排気で過湿残りを掃く
期別の運転レシピ(吸排気と合わせて
(CO₂制御案と両立する形)
接種〜菌糸伸長:RH 70%
  • 排気:最小(E=1台デューティ30–50%)
  • 吸気:原則OFF(差圧維持用の微給気はOK)
  • 加湿:KNC A=基準、B=追従+10%、±2%RHでオン/オフ
熟成:RH 72%
  • 排気:最小〜小(E=1台デューティ40–60%)
  • 吸気:必要時のみ
  • 加湿:伸長期と同様、露点差を常時監視
原基形成:RH 90%
  • 排気:高換気(CO₂ 650ppm狙い)。E=3台強〜4台強
  • 吸気:S=85–100%
  • 加湿:換気強化で乾くため、**平常出力+20〜30%**の前倒し補償
    • ±1%RH幅、最小ON120秒(霧不足→乾燥防止)
子実体成長 前半:RH 92%
  • 排気:中〜やや高(CO₂ 900ppm)
  • 吸気:S=75–85%
  • 加湿:原基と同様、ただし連続>95%が30分超の時は排気を一段上げるか加湿を5–10%落とす
子実体成長 後半:RH 88%
  • 排気:中(形状安定)
  • 吸気:同上
  • 加湿:**中心88%、±2%**でヒステリシス運転。仕上げ直前は86–88%まで下げると表面が締まりやすい
センサー&監視
  • RHセンサーは2点(1.2–1.5 m高さ、霧直撃回避の遮蔽付き)→平均値で制御、差が大きい場合は循環不良として送風を増す
  • 露点/温度・CO₂と排気段を同時ログ化し、換気段に対する加湿補償量を週次で学習更新(±5%刻み)
まとめ(即実装の指示書)
  1. 目標RH:70 / 72 / 90 / 92→88%(各期)
  1. 霧太郎2台:交互デューティ+フィードフォワード(排気・吸気段に比例+10〜30%)
  1. ΔTdp 2–3℃**をキープ(結露ラインが出たらRH−2〜3% or 断熱)
  1. センサー2点平均・最小ON/OFF 60–120秒・±1〜2%RHのヒステリシス

D: 推定収穫量

4クールの収穫期で生キクラゲの予測収穫量
white_tremella_yield_forecast_ 控えめシナリオ300g_本
菌床本数Flush1本あたり生重量(g)合計(kg)
11st1350.14
12nd900.09
13rd540.05
14th210.02
1合計3000.3
white_tremella_yield_forecast_高収量シナリオ500g_本
菌床本数Flush1本あたり生重量(g)合計(kg)
11st2250.23
12nd1500.15
13rd900.09
14th350.04
1合計5000.5
white_tremella_yield_forecast_標準シナリオ400g_本
菌床本数Flush1本あたり生重量(g)合計(kg)
11st1800.18
12nd1200.12
13rd720.07
14th280.03
1合計4000.4
各クールの収量予測を、これまでの配分(45% / 30% / 18% / 7%)に基づいて試算しました。
1本あたりの累計収量は不確定なので、運用でよく見る3パターンで提示しています:
控えめ:        生300 g/本(4クール累計)乾燥30g/本 :乾燥120Kg/4,000本/1室
標準:           生400 g/本(4クール累計)乾燥40g/本 :乾燥160Kg/4,000本/1室
高収量:        生500 g/本(4クール累計)乾燥50g/本 :乾燥200Kg/4,000本/1室
読み方(例:標準シナリオ 400g/本)
  • 1本あたり:
    • 1st:180 g、2nd:120 g、3rd:72 g、4th:28 g(合計 400 g)
  • 1000本なら:
    • 1st:180 kg、2nd:120 kg、3rd:72 kg、4th:28 kg(合計 400 kg)
白いキクラゲ菌床で4クール収穫完了までの現実的な目安:35〜60日(環境最適化で前者寄りに短縮可能)。
生キクラゲを乾燥させた場合の概ねの量は1/10で計算
🔹 生キクラゲ → 乾燥キクラゲの重量変換
  • 生キクラゲの水分含量は 約90%前後(季節・栽培条件で 88–93%程度)
  • 乾燥工程で水分を10%前後まで下げるため、重量は概ね 1/8〜1/12 に縮むのが一般的です。
  • 実務では「1/10換算」が多く使われます。
🔹 例
  • 生キクラゲ 100 kg → 乾燥後 約10 kg
  • 生収量 400 g/本(4クール累計)の場合 → 乾燥換算で 40 g/本程度
🔹 注意点
  • 乾燥方法(熱風乾燥、凍結乾燥、真空乾燥など)で仕上がり重量が変動
    • 高温乾燥だと仕上がりは軽くなるが、色・成分劣化リスクあり
    • 凍結乾燥なら重量率は同様でも、色や多糖類(美容・食品機能性)保持率が高い
  • 仕上げ水分率を8–10%に揃えることで、保存安定と重量計算の再現性が出やすい
👉 生重量の1/10換算をベースにして問題ありません。
商品規格で「水分含量○%以下」と定められている場合は、それに合わせて 1/9~1/11 で補正するのがベスト

E: 栽培期ごとの最適室温

フェーズ主な目的最適室温レンジ推奨中心値ポイント
菌糸伸長期(接種~活着)菌糸の基質への定着・伸展24–28℃26℃前後高めで菌糸を早く走らせる。ただし28℃以上は汚染菌リスク増。
菌糸熟成期(充実期)菌糸の密度・基質内での充実25–27℃26℃呼吸熱に注意。CO₂や湿度をやや安定させて内部成熟を促す。
原基形成期子実体の原基誘導23–26℃24℃温度低下+CO₂減少+高湿(90%前後)がトリガー。温度変化が重要。
子実体成長期(前半)幼菌を安定させる22–25℃23℃乾燥に弱いためRHを92%以上。温度は菌糸期より少し低め。
子実体成長期(後半~収穫)傘の肥大・形状安定22–24℃22–23℃仕上げ期はやや低めが形状・色艶に良い。過高温は徒長・変形の原因。
F: 栽培室(144 m³ / 4000本)での運用の注意点
  • 呼吸熱:菌床総量 ≈5.2t → 発熱量も大きいので、夏場は空調の余裕容量が必須。
  • CO₂制御と連動:温度上昇に伴いCO₂排気が増える → 外気が暑いと加湿負荷も大きくなる。
  • 変動管理:原基誘導は「温度を2–3℃下げる操作」が重要なトリガーになる。
  • 結露リスク:22℃付近でRH 92%以上にすると、壁面が外気温より低い場合に結露する → 断熱 or 送風で回避。
✅ まとめ
  • 菌糸期は 26℃前後
  • 原基形成で24℃程度に下げる
  • 子実体成長は 22–23℃で安定させる
「環境制御マトリクス表(CO₂×RH×Temp×換気)」
フェーズCO2目標レンジ(ppm)CO2中心(ppm)RHレンジ(%)RH中心(%)室温レンジ(°C)室温中心(°C)推奨換気量レンジ(m³/h)推奨換気量中心(m³/h)中心時ACH(回/h)吸気(FY-40MSU3)目安排気(FY-19CG1)目安
菌糸伸長1000–2000150065–757024–2826300–7004803.33基本OFF(差圧維持の微給気のみ)1台 弱(デューティ30–50%)
菌糸熟成800–1500110070–757225–2726300–7004603.19基本OFF(差圧維持の微給気のみ)1台 弱(デューティ40–60%)
原基形成500–80065088–929023–26242400–3200272018.8985–100%(約2630–3100 m³/h)3台 強(必要時4台 強)
子実体成長(前半)800–120090090–959222–25231800–2400217015.0775–85%(約2320–2630 m³/h)2台 強(状況で3台 強)
子実体成長(後半〜収穫)800–120090085–908822–2422.51800–2400217015.0775–85%(約2320–2630 m³/h)2台 強(品質重視で微調整)
環境制御マトリクスを作成しました。
  • 表タイトル:白キクラゲ 栽培環境制御マトリクス(144m³ / 4000本)
White_Tremella_Env_Matrix_144m3_4000blocks.xlsx
使い方メモ
  • CO₂・RH・室温はそれぞれ「レンジ」と「中心」を記載。
  • 推奨換気量は前回のCO₂収支計算に基づく中心値(m³/h)と、144 m³室での**ACH(換気回数/h)**を併記。
  • 機器との対応は、**FY‑40MSU3(吸気)**の目安出力と、**FY‑19CG1(排気)**の台数/強設定を直感的に引けるように欄を設けています。

G:成長期の切換わり判別方法

菌糸伸長期、菌糸熟成期、原基形成期、子実体成長期、収穫・維持期の切り替わりを計測データだけで見極める方法
“環境・生体の計測データだけ”でも各ステージの切り替わりは実用レベルで判定可能です(完全一致ではなく確率的判定)。ポイントは複数指標の同時監視+変化点検出
使うと精度が上がる指標
  • CO₂排出量(ppmそのものではなく発生レート)
  • 基材コア温度と室温の差(ΔT=T_core−T_air)
  • O₂消費レート(可能なら)
  • 重量変化(基材ごとにロードセルで含水・乾燥の推移)
  • 噴霧後の湿度回復時間(RHが設定値に戻るまでの時間)
  • VOC(MOSセンサで総量のトレンドを見る程度でOK)
  • 画像(可能なら:原基検知・子実体面積/個数)※「計測データ」に含められるなら精度が跳ね上がります
ステージ別の“データ上の顔つき”
ステージ主なサイン(定性的)実装の目安(例)
菌糸伸長期CO₂排出レート上昇中、ΔT_core-airが正で1–3℃程度を維持、重量はゆっくり減少24–48h移動平均でCO₂発生レートの上向き傾向+ΔT>閾値
菌糸熟成期CO₂発生レートの頭打ち〜微減、ΔTもピーク後に低下、RH応答変化は小傾き(一次微分)が0±εで安定、ΔTの下降変化点を検出
原基形成期環境切替(CO₂低下・光照)に対し、CO₂の短期スパイク後に発生レートが低下、噴霧後のRH回復がやや遅くなることも環境変更をトリガに変化点検出(CO₂レートの谷、RH回復時間の延長)+(画像があれば原基ピクセルの新規出現)
子実体成長期CO₂発生レートが再び緩やかに上昇、重量は間欠的な減少(蒸散)→給湿で戻る、ΔTは小さめで安定CO₂レートの緩上昇+日内の重量ギザギザ(蒸散⇄給湿)パターン
収穫・維持期CO₂レートとΔTが漸減、重量トレンドは安定〜微減、画像では笠厚み/面積の伸びが鈍化レートの連続低下+画像の成長速度(面積増分)の鈍化
どうやって“発生レート”を見るか(簡易同定式)
部屋体積 V[m³]、換気量 Q[m³/h]、室内CO₂濃度 C[ppm]、外気 CO₂ を C_out[ppm] とすると、基材からの発生量 E[ppm·m³/h] は:
dC/dt ≈ (E/V) - (Q/V)*(C - C_out)
→ E ≈ V*(dC/dt) + Q*(C - C_out)
  • ログの**微分(dC/dt)**は5–15分移動回帰で平滑化
  • E を基材本数で割ると1本あたりの発生レートになり、ステージ差が見やすくなります
閾値の置き方(実務的な初期値)
  • ΔT_core-air 閾値:+1.0〜+1.5℃超が48h連続 →「伸長期アクティブ」
  • CO₂発生レート傾き:移動窓内で0付近に収束(±5〜10%/日) →「熟成期」
  • 環境切替後の応答:CO₂レートが数時間で下方変化点を持ち、その後低位安定 →「原基形成入り」
  • 重量の日内ギザ(蒸散パターンの振幅/周期が明確)→「子実体成長中」
  • CO₂レート・ΔTの連続低下+画像の成長鈍化 →「収穫・維持」
数値の絶対値は品種・基材・密度で変わるため、自施設の最初の2–3サイクルを“教師データ”にして自動調整するのが現実解です。
判定アルゴリズムの雛形
  1. 5–15分間隔で各指標を取得(CO₂/O₂、T_core、T_air、RH、重量)
  1. 各系列を移動平均+ロバスト回帰で平滑化
  1. 特徴量:{平均、一次微分、二次微分、日内振幅、ステップ応答(噴霧後RH回復τ)}
  1. 変化点検出(PELT/窓相関/累積和CUSUM)
  1. ルールベースHMM(隠れマルコフ)またはランダムフォレストでステージ確率を算出
  1. しきい値超で状態遷移を宣言(ヒステリシスを持たせてフリップ防止)
センサ配置とサンプリング
  • T_core:代表基材に細径サーミスタ(数点)+交換ローテ
  • CO₂/O₂:室内2〜3点+排気ダクト上流1点(外気も1点)
  • 重量:棚/トレイ単位のロードセル(代表点だけでも可)
  • RH/温度:気流の当たり過ぎない位置に高さ別
  • 取得間隔:5〜10分、変化点検出は30〜120分窓で
画像が使えるなら
  • カメラ2〜3台の定点画像から原基ピクセルの新生・子実体輪郭面積の増分を見れば、原基形成期/成長期の確定度が一気に上がります。
  • 画像が難しくても、上記のCO₂レート×ΔT×重量×RH応答で十分実用的です。
結論:
CO₂発生レート・ΔT_core-air・重量・RH応答を組み合わせ、変化点検出+ヒステリシスで判定すれば、各期の切り替わりをデータだけで高い再現性で見極められます。

H: 144㎥の栽培室でFY-40Msu3を1台で吸気、FY-19CG1を4台で排気をする場合、各成長期による最適風量を室内圧力で求める事は可能か?

方法:「室内差圧ΔPをセットポイント化」して、各期で必要な換気回数(ACH)になるよう吸・排気を段階制御します。まずは手持ち機器の実力値を把握——以下がメーカー公表の風量です。
144 m³ 室での理論ACH(60 Hz時の目安)
  • 排気1台:6.46 ACH、2台:12.9 ACH、3台:19.4 ACH、4台:25.9 ACH
  • 吸気1台フル:21.0 ACH※実流量はダクト/フィルタ圧損で低下。最終的にはP–Q特性範囲で確認。Panasonic Biz
ステージ別:ΔPターゲットと運転パターン(FY-40MSU3×1吸気、FY-19CG1×4排気)
ステージ目標ACH帯ΔP目安(室内基準)具体運転(60 Hz目安)補足
接種〜菌糸伸長0.2–0.5+3〜+8 Pa(陽圧)排気4台=停止/吸気はダンパー絞り+間欠(ACH過大防止)陽圧で塵侵入を抑制。CO₂上限2000 ppmを超さない範囲で最小換気。
菌糸熟成0.5–1+2〜+6 Pa(陽圧)排気停止/吸気は弱い連続または間欠O₂確保しつつ清浄維持。
原基形成5–8−2〜−5 Pa(弱陰圧)排気1台 連続(6.46 ACH)。吸気はOFFか絞り、ΔPで微調整CO₂を500–800 ppmへ素早く低下。湿度維持に留意。
子実体成長8–12−5〜−10 Pa(中陰圧)排気2台 連続(12.9 ACH)を基準。乾燥しやすければ1.5台相当(2台間欠)へ風乾に注意。加湿と連動。
収穫・維持4–8−3〜−5 Pa排気1台 間欠(60–90%)または2台弱め作業時ドア開閉の影響をΔPで吸収。
50 Hz地域では、排気1台あたり6.58 ACH・吸気17.99 ACHが目安(上表とほぼ同等の運用でOK)。Panasonic Biz+1
「ΔPから風量」を求める実務手順(キャリブ推奨)
  1. 漏気キャリブ(Q–ΔP関係の同定) 排気停止→吸気を段階運転/次に吸気停止→排気を1→2→3→4台…と切替。各点で室内ΔPダクト流量(風量計 or フード)を採取し、 Q = C·(ΔP)^n(n≈0.5–0.65)にフィット。以後は必要Q(=ACH×144)からΔPセットポイントを逆算できます。
  1. 二重ループ制御 内側:ΔP-PID制御(吸気ダンパー開度/吸気間欠で調整)。 外側:CO₂上位制御(上限接近時は排気台数↑/間欠率↑、湿度低下時は|ΔP|を浅く)。
  1. 設備ポイント 最大排気>吸気時は給気口を意図的に設置(プレフィルタ+中性能以上)し、侵入空気を必ずフィルタ経由に。ファンはP–Q特性範囲で使用。Panasonic Biz
すぐ使える計算の型
  • 必要風量Q [m³/h] = 目標ACH × 144
  • 推定ΔP = (Q/C)^{1/n}(キャリブ後に使用)
  • 例:子実体成長で10 ACH狙い → Q=1440 m³/h → ΔPをその値に合うよう調整。 実運用はΔP±2 Paのバンド+CO₂/湿度の上位監視で安定します。
栽培室で測った2–4点のΔP–Qログを、各ステージのΔPターゲット値を数値確定したA4/PDF・Excel版にまとめる。(50/60 Hz両対応の台数・間欠表付き)。