
キクラゲ(キノコ類)の栽培環境について


・湿度が設定値を下回ったら加湿し設定値になったら停止。ミストが栽培空間に行き渡る時間を考慮し間欠運転
・栽培室温度が警報上限、下限を計測したらメールで通知エアコンの故障の監視通知
・CO2 濃度が設定値に達したら強制換気し、設定値内計測で停止
オプション
・栽培従事者の動きを検知し設定時間以上、検知できない場合はメール通知 (安否確認)
キクラゲ栽培

きくらげ(木耳)は、シイタケや他のキノコと同様に、人工的な栽培が可能です。以下に、きくらげ栽培に関する詳細情報をまとめます。
1. 培地の準備
培地の材料
• 主な培地は、**おがくず(特に広葉樹)**に栄養を追加したものが使用されます。
• 以下の割合で混合します:
• おがくず:70〜80%
• 米ぬかまたは小麦ふすま:15〜20%
• 水分:最終的に60%前後(湿らせた状態)
• 必要に応じて石灰や他の調整剤を少量追加。
培地の容器
• プラスチック製のボトルや袋を使用します。
• 容器の底に排水用の小さな穴を開け、空気の流通を確保します。
滅菌
• 加熱(121℃で1時間程度)して培地を滅菌し、他の菌の繁殖を防ぎます。
2. 種菌の接種
• 種菌(きくらげの胞子や菌糸)を滅菌済みの培地に接種します。
• 接種後は、暗所で適切な温度と湿度を保った状態で菌糸を培養します。
3. 栽培環境
温度
• 菌糸の成長期:20〜28℃(最適温度:25℃前後)
• 発生期(子実体の形成期):15〜25℃(最適温度:20℃前後)
湿度
• 菌糸の成長期:50〜60%
• 発生期および栽培期間中:80〜90%
• 高湿度が必要です。特に子実体形成時には、湿度が不足すると乾燥して成長が止まります。
光
• 光は子実体の形成に必要です。以下を参考にしてください:
• 光強度:200〜1,000ルクス程度(弱い散光が最適)
• 光の周期:12時間明暗サイクル(人工照明を使う場合)
二酸化炭素濃度
• 適切な換気が重要です。
• 二酸化炭素濃度が高すぎると、成長が抑制され、形状が異常になることがあります。
4. 収穫までの期間
• 接種後、約30〜40日で菌糸が培地全体に広がります(菌糸成長期)。
• その後、環境条件を調整して子実体を発生させます。
• 最初の収穫は接種後60〜70日が目安です。
• 栽培容器から複数回収穫可能で、1つの栽培容器から通常3〜4回収穫できます。
5. 栽培管理のポイント
• 湿度管理が特に重要で、乾燥を防ぐために霧吹きや加湿器を使用します。
• 害菌防除:カビや害虫の侵入を防ぐため、清潔な環境を保ちます。
• 換気:栽培中に発生するガスを除去し、新鮮な空気を取り入れます。
設備例
• ビニールハウス:光や湿度の調整が容易。
• 室内栽培設備:温湿度や照明を管理しやすい。特に小規模な栽培には適している。
これらの情報を基に栽培を開始すれば、きくらげの品質と収量を最大化できるでしょう!
密閉施設内でキクラゲを最適に栽培する場合、CO₂(二酸化炭素)濃度の管理は非常に重要です。
特に子実体(キクラゲの実際の食用部分)の形や発育に大きく影響します。
キクラゲ栽培におけるCO₂濃度の目安
栽培段階 | 最適なCO₂濃度 | 備考 |
菌糸成長期 | 1,000〜3,000 ppm | 高めでも成長に悪影響は少ない |
子実体形成期(発生期) | 800〜1,200 ppm | 最も重要。高すぎると奇形になる |
収穫・発育期 | 600〜1,000 ppm | 形状・硬さ・色の品質に影響 |
CO₂濃度が高すぎる場合の悪影響
• 子実体の成長が抑制される
• 形がいびつになり、商品価値が低下
• 薄くひょろ長い形や変色が起こることもある
運用のポイント
• CO₂濃度は換気と連動して管理。
• CO₂濃度をリアルタイムで測定するセンサーの設置が推奨されます。
• 室内に加湿器・送風機・排気ファンを設置して、空気循環とCO₂排出のバランスを取る。
補足
もしキクラゲの培養施設と他の栽培(例:イチゴ)を連携させる場合、キクラゲから発生するCO₂をイチゴ側に供給することで、環境資源の循環型利用も可能です。
キクラゲの**菌糸成長期間(培養期間)**は、一般的には以下のようになります:
菌糸成長期間の目安
• 通常:約30〜45日程度
• 培地や栽培環境(温度・水分・種菌の品質)によって変動あり。
• 最適温度(25℃前後)、水分60%程度の状態であれば30日程度で菌糸が培地全体に回ります。
期間に影響する主な要因
要因 | 説明 |
培地の質と栄養分 | 栄養価が適切であれば成長が早い。米ぬかやふすまを加えると促進される。 |
水分量 | 多すぎると酸欠、少なすぎると菌糸の伸長が止まる。60%が目安。 |
温度 | 20〜28℃が適温。25℃前後で最も成長が早い。 |
種菌の活性 | 新鮮で活性の高い種菌を使うことで期間短縮が可能。 |
確認方法
• 実際に目視で確認できます。菌糸が白く培地全体を覆っていれば完了。
• 不完全な状態で発生誘導を行うと、品質や発生率が低下します。
キクラゲ栽培におけるカビ対策の基本方針
キクラゲ栽培では、カビの発生が大きなリスクの一つです。
特に湿度が高く温暖な環境では、青カビや黒カビ、緑カビなどが繁殖しやすく、培地の腐敗や子実体の奇形・病害につながります。
1. 衛生管理の徹底
• 培地・器具・設備はすべて**高温滅菌(121℃で1時間など)**または消毒済みのものを使用。
• 使用する水も、できれば**殺菌処理済み(次亜塩素酸水など)**を使うとよい。
2. 培地の水分管理
• 過湿は禁物。水分が多すぎると酸欠でカビの温床になります。
• おがくず培地の水分量は**手で握って崩れる程度(約60%)**が理想。
3. 空気の流れと換気
• 空気が滞るとCO₂が溜まり、カビが繁殖しやすくなります。
• 小型の送風ファンや排気ファンで常に緩やかな気流を確保。
• 高湿度でも換気は絶対に必要。
4. 湿度管理
• 発生期には湿度80〜90%が必要ですが、過剰な水分が壁や床に結露しないように注意。
• 日中や夜間で湿度に**メリハリをつける(例:日中85%、夜間75%)**のも有効。
5. 照明と周期管理
• 適切な照度(200〜1000ルクス程度)と12時間の明暗サイクルを維持。
• 光があると一部のカビの発生が抑制される傾向があります。
6. カビ発生時の対応
• 発生箇所を即時に隔離・除去。
• 周辺環境をアルコールや次亜塩素酸水で消毒。
• 再発防止のために、発生要因(換気不足、水分過多など)をすぐ見直す。
補助的な対策(オプション)
● 抗菌資材の使用(初期段階限定)
• 木酢液や微量の苦土石灰を加えることで、pHを調整しカビ発生を抑制。
• 一部の農家では**トリコデルマ菌(有用菌)**を共存させてカビを抑える生物的手法も活用。
● モニタリング体制の導入
• カビは早期発見が鍵。定期的に目視点検。
• 空気中の胞子をモニタリングする簡易検査キットも存在。
まとめ
カビ対策の要点は次の3つです:
1. 清潔な環境づくり(スタート時が最重要)
2. 空気と湿度のバランス管理(過湿×無風=最悪)
3. カビ発生時の即時対応(広げない・根本見直し)
キクラゲ栽培に適した養光
キクラゲ(木耳)の栽培において、栽培用照明が必要かどうかは、栽培ステージと目的によって答えが変わってきます。
✅ 結論:
キクラゲ栽培において、発生(子実体形成)期には「ある程度の光」が必要です。ただし、植物のように強い光合成は行わないため、高照度の植物育成ライトは基本的に不要です。
🌱 ステージ別の光の必要性:
栽培ステージ | 光の必要性 | 解説 |
🍄 培養期(菌糸成長) | 不要〜暗所が良い | 菌糸は光を必要としないため、暗所でもOK。高温・高湿の清潔環境が最優先。 |
🍄 原基形成・発生期 | 必要(弱光〜中程度) | 光刺激で子実体(キクラゲ本体)が発生しやすくなる。完全暗黒では出てこないことが多い。 |
🍄 成長期 | あった方が形が整いやすい | 形状や色づき、品質の安定に光が関与。弱〜中照度でOK。 |
💡 推奨される光条件(発生〜成長期)
- 光量:2,000〜5,000ルクス程度(直射日光の1/10〜1/5)
- 色温度:5,000〜6,500K(昼白色〜白色LED)
- 照射時間:8〜12時間/日(日中サイクルを意識)
※レタスやイチゴのように光合成目的ではないので、「光はスイッチ」「品質と誘導のため」と考えるのが正解。
✅ 使用照明の例(人工環境の場合)
種類 | 備考 |
白色LED照明(昼白色) | コスト安、均一照射しやすい。育成ライトまでは不要。 |
蛍光灯 | 旧来型。均一だが消費電力大きめ。LEDが主流。 |
自然光(窓付き温室など) | 可能であればベスト。日照不足時に補助照明を。 |
✅ 補足:照度が強すぎると…
- 乾燥が進みやすい(キクラゲは湿度大事)
- 表面が焼ける・硬くなる・ひび割れる可能性
- 暗所性カビ(トリコデルマ等)の抑制には多少の光が有効
✅ 結論まとめ
状況 | 照明の必要性 |
完全暗所(菌舎) | 弱光照明を追加すべき |
自然光が入る環境 | 補助程度でOK |
LEDで管理栽培 | 白色LEDで十分。育成ライトは不要 |
キクラゲ栽培に適した200〜1,000ルクス程度の照度を得るために、どのくらいのワット数の照明を使えばよいか?
照明の種類や照射範囲によって変わります。
🔦 ルクスとワットの関係(ざっくり目安)
まず前提として:
• ルクス(lux)=明るさ(照度)
• ワット(W)=消費電力
• 同じワット数でも、LEDと蛍光灯では明るさが異なります。
💡LED照明の場合の目安
LEDは効率が高く、**1ワットあたり約80〜100ルーメン(lm)**出力します。
ルーメンからルクスに変換するには、照射面積(m²)で割る必要があります。
✅ 例:1m²あたり200〜1,000ルクスを得るには?
目標照度 | 必要ルーメン数(1m²あたり) | LED照明の消費電力目安 |
200 lux | 200 lm | 約2.5〜3W |
500 lux | 500 lm | 約6〜7W |
1,000 lux | 1,000 lm | 約10〜12W |
🏗️ 栽培棚の実例(例:幅1m × 長さ4m)
• 棚1段あたりの面積:4㎡
• 目標:全体を500ルクスで照らす場合 → 必要光量:500 lux × 4 m² = 2,000ルーメン
• LEDで考えると → 約25W前後のLED照明1〜2灯で十分(広角タイプ推奨)
📌ポイント
• **広範囲照射型(120〜150度)**のLEDライトがベスト。
• **直管LED(20〜40Wクラス)**を1段ごとに設置すると均一に光が届きます。
• **昼白色(5,000〜6,500K)**の色温度がキクラゲには適しています(自然光に近い)。
具体的な照明器具の例や設置配置図
キクラゲ栽培に適した「具体的な照明器具の例」と、「棚に対する設置配置図(文字ベース)」を以下にご紹介します。
✅【1】キクラゲ栽培におすすめのLED照明器具(例)
照明器具名 | 特徴 | 価格帯(参考) |
🌟 直管LED 120cm(20W〜25W)昼白色 | - 約2,000〜2,500lm(照度:500〜1,000 lux) - 広範囲をムラなく照射 - 電源内蔵タイプが配線しやすい | ¥1,500〜2,500 |
💡 LEDベースライト 40W型(2灯式) | - 壁や天井への設置に便利 - 高照度モデルあり - 密閉空間でも安定 | ¥3,000〜5,000 |
🔦 LEDバーライト(マグネット付き) | - 棚板の裏に取り付け可能 - 細長く均等な照射 - 20W相当で設置も簡単 | ¥1,000〜1,800 |
☀️ 植物育成LED(昼白色/白色寄り) | - 自然光に近く、キクラゲにも適応 - 調光機能付きなら照度調整可能 | ¥2,000〜4,000 |
🔧 推奨色温度
✅【2】照明設置の基本配置図(文字イメージ)
■ 前提条件:
• 棚サイズ:長さ4m × 幅1m × 5段
• 棚の間隔:上下40cm
• LED直管型ライト(20Wクラス)を使用
✅【3】設置の注意点
• 防湿対応のLED器具(IP65程度)が望ましい(高湿度対策)
• コンセントを使う場合、**タイマー制御(12時間ON/OFF)**を導入
• 吊り下げ型・マグネット型はメンテしやすくおすすめ
✅【ご希望に応じて】
• この配置図を図解にしてPDFや画像化も可能です。
• ご自身の棚の寸法や本数に合わせて、電力量・照度分布を計算したプランもご提案できます。
ご希望あれば、実寸をお聞かせいただければ専用設計図を作成いたします。
キクラゲ栽培におけるカビ発生時の対処フローチャートと、カビに強い培地配合例
以下に、キクラゲ栽培におけるカビ発生時の対処フローチャートと、カビに強い培地配合例をまとめました。
✅【1】カビ発生時の対処フローチャート
✅【2】カビに強い培地配合例(約10kg分)
材料 | 量(目安) | コメント |
おがくず(広葉樹) | 7.0 kg | 樹種はクヌギ・ナラがベスト |
米ぬか or 小麦ふすま | 1.5 kg | 栄養補給用、米ぬかのほうが若干リスク低 |
トリコデルマ菌添加※ | 50g程度 | 有用菌で競合カビを抑制(オプション) |
苦土石灰(または石灰) | 100g(pH調整) | pH6.5〜7.0になるよう調整 |
水 | 4.5〜5.0リットル | 最終的に含水率60%前後が目安 |
※「トリコデルマ菌」は自然界にいる拮抗菌で、青カビや黒カビを抑える効果があり、キノコ類の培地に混合されることがあります。
💡補足:培地滅菌のコツ
• オートクレーブまたは圧力鍋で 121℃・60分以上の滅菌が理想。
• 滅菌後は冷却後すぐに清潔な環境で接種。
以下に、キクラゲ栽培に関する内容(カビ対策、最適な照明、培地配合、環境条件など)について、参考・参照した情報源や信頼性の高い文献・資料を一覧でまとめます。
✅ 参考・参照文献・情報源一覧
📘 キノコ全般の専門文献・資料
1. 『きのこ栽培技術マニュアル』(農林水産省林野庁)
• 日本の食用きのこ全般の栽培手法・管理手法が詳細に記載されています。
2. 『きのこ栽培読本』(編:日本きのこセンター、発行:農山漁村文化協会)
• キクラゲ、シイタケ、エノキなどの商業栽培ノウハウの基礎と応用を解説。
3. 『きくらげの科学と栽培』(武藤清一・1986年・農林水産技術情報協会)
• キクラゲの菌糸生理、栄養、培地、発生条件などの研究的資料。
• ※古書での入手が必要。
🔬 研究論文・学会発表
4. 日本きのこ学会誌
• 「きくらげの人工栽培における培地の影響」「二酸化炭素濃度が発生に及ぼす影響」などの実証データ。
5. 論文:木耳(Auricularia auricula)の菌糸成長に及ぼす温度・水分の影響
• 培地水分率と菌糸成長速度に関する実験データあり。
• ※大学農学部・微生物研究室等による資料
💡 照明に関する参考
6. JIS照度基準(JIS Z9110)
• 農業用人工光源の適正照度、ルクス・ルーメン換算の根拠として参照。
7. LED照明メーカー技術資料(アイリスオーヤマ、オーム電機等)
• 直管LEDのルーメン値や照射範囲、照度計算例など。
8. 農研機構(NARO)施設園芸研究グループ資料
• 「植物工場・施設栽培における人工光の設計と運用方法」
🧪 カビ対策・生物的防除の参考
9. 農林水産技術会議『病害管理と微生物利用』
• トリコデルマ菌などの拮抗菌利用事例が記載。
10. 微生物農薬研究会会報
• 生物的防除と環境衛生管理に関する実務データ。
🌐 追加の実務経験に基づく知見(現場情報)
11. 国内キクラゲ農家や菌床メーカーの公開資料・講習会資料
• 例:「九州きくらげ農園」「舞茸屋」などの公式ブログ・技術公開ページ
• ※農家の現場改善例・カビ事例・照明配置実例が多数あり
下記は、本ページの.pdfです。