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シン・キクラゲ栽培施設環境調整の考察

VER.250709K.F Confidential
本資料はシン・キクラゲ栽培施設 1区画6m × 8m × 高さ2,5mに合わせて作成しています。

各成長期(分類)毎の環境調整要素の最適値と各要素の目的

シン・キクラゲ栽培において各成長過程において環境要素を最適値に調整する事はロスを減らし安定収穫する観点からも重要です。
弊社では栽培施設に自動環境調整システムを組み込み最適環境を提供させて頂きます。
「シン・キクラゲ(Tremella fuciformis)」の栽培過程を「各成長期」に分けて、それぞれの環境要素(CO₂濃度・気温・湿度・照度・送風・発生CO₂量)について、最適値と成長への影響をまとめた表を作成しました。
成長過程名称CO₂濃度 (ppm)気温 (℃)湿度 (%)照度 (時間 / lx)送風 (時間 / m³/h)発生CO₂量 (推定)成長に与える影響
1. 接種~菌糸伸長期1,000~2,00024~2865~750(遮光)無風または弱風(2h/20 m³/h)少(発酵による微量)菌糸の活着と均一な伸長。過乾燥や光による阻害を防ぐ。
2. 菌糸熟成期800~1,50025~2770~750(遮光)微風(4h/30 m³/h)菌糸が培地内で充実し、子実体の誘導準備が整う。酸素供給が重要。
3. 原基形成期500~80023~2685~906~10h / 200~500 lx中風(6h/50 m³/h)光・湿度刺激とCO₂低下により原基が形成される。環境変化がトリガー。
4. 子実体成長期600~1,20022~2585~9512~16h / 500~1,000 lx中風~強風(8h/80 m³/h)水分供給と光が膨張成長を促進。送風は過湿防止とCO₂排出に必須。
5. 収穫直前期800~1,50020~2380~9012h / 500 lx弱風(4h/40 m³/h)減少傾向成熟安定を図る。気温・湿度をやや下げて品質保持と腐敗防止。

補足説明:

  • CO₂濃度:菌糸期はやや高め、原基形成には急激な低下が刺激に。子実体期は適正範囲を保つことで品質を安定。
  • 気温・湿度:菌糸成長は高温多湿、子実体期はやや低温多湿が基本。
  • 照度(照射時間 / 照度):菌糸期間は完全遮光、原基から照射開始。光は誘導と形状に影響。
  • 送風:過湿防止とガス交換に重要。CO₂濃度制御の手段でもある。
  • 発生CO₂量:菌糸成長~子実体成長期に多く発生(1菌床あたり最大10~20g/日CO₂相当)。

シン・キクラゲの栽培空間(4m × 8m × 高さ2.5m)における推奨菌床数と、最適な高さ


✅ 前提条件

  • 菌床サイズ:直径12cm × 高さ20cm(標準的な市販ブロック型)
  • 栽培方式:棚式(多段ラックを使用)
  • 通路・作業スペース:幅60cmを2本確保(中央縦1本+端1本)
  • 換気・送風・湿度保持のための空間も考慮
  • 1段の棚高さ:30cm程度(子実体成長を考慮)
  • 菌床間隔:横15cm × 奥行き20cm(発育空間を含めた配置間隔)

✅ 配置レイアウトと計算

● 有効床面積の計算(通路を除く)

  • 総面積:4m × 8m = 32㎡
  • 通路(幅0.6m × 8m × 2列)= 約10㎡使用
  • 有効面積:32㎡ - 10㎡ ≈ 22㎡

● 1段に置ける菌床数(15cm × 20cmのスペースを1菌床に必要とする)

  • 1㎡あたり:約 100cm / 15cm × 100cm / 20cm ≈ 33菌床
  • 22㎡ × 33菌床 ≈ 726菌床 / 段

● 棚段数の検討

  • 天井高:2.5m
  • 各段:30cm+空間ゆとりで35cm想定
  • 2.5m ÷ 0.35m ≈ 7段(上段は作業性を考慮して 6段が推奨

✅ 合計菌床数

  • 726菌床 / 段 × 6段 = 約4,356菌床

✅ 推奨:

4,000菌床前後

安全マージン・換気通路・棚脚部などを含めて実運用では3,800~4,200菌床がベストです。

✅ ベストな高さ設計アドバイス

  • 天井高2.5mで6段運用が最もバランスが良いです。
    • 十分な空間があり、湿度・光・風の管理がしやすい。
    • 上下の菌床へのメンテナンスが可能。
  • 注意点
    • 最上段は踏み台などの作業補助が必要。
    • 加湿・照明・送風の配置設計も段数に応じて分散すべき。

シン・キクラゲを4000菌床栽培した場合の、各成長期における必要なCO₂濃度(ppm)と発生CO₂量(g)を、栽培空間4m × 8m × 2.5m(=80㎥)での条件を前提として表に記載。


✅ 計算前提

項目数値
栽培空間体積4m × 8m × 2.5m = 80m³(= 80,000L)
CO₂濃度1ppmあたりのCO₂量80,000L × 1ppm = 0.08L = 約0.16g(理想気体換算)
菌床1つあたりのCO₂発生量(1日)以下に示す通り、各成長期ごとに変化

✅ 成長期別のCO₂発生量(1菌床/日)目安

成長期名CO₂発生量(g/菌床/日)根拠・補足
接種~菌糸伸長期1~2g呼吸活動は穏やか
菌糸熟成期2~3g菌糸活性が最大に近い
原基形成期3~4g刺激応答により呼吸量上昇
子実体成長期4~5g水分代謝+細胞膨張で最大レベル
収穫直前期2~3g成熟安定に入り代謝やや低下

✅ 成長期別CO₂濃度・発生量計算表(4,000菌床基準)

成長期名CO₂発生量(g/日)濃度上昇量(ppm/日)備考(密閉時想定)
接種~菌糸伸長期4,000~8,000g約25,000~50,000ppm(2,500~5,000ppm/h相当)完全密閉では極めて高濃度に達するため、定常換気が必要
菌糸熟成期8,000~12,000g約50,000~75,000ppm活性高く、強制換気必須
原基形成期12,000~16,000g約75,000~100,000ppm実運用ではCO₂「除去」目的の換気が求められる
子実体成長期16,000~20,000g約100,000~125,000ppm※実際には換気で常時800~1,200ppm程度を維持
収穫直前期8,000~12,000g約50,000~75,000ppm換気量をやや抑えることで品質保持

✅ 補足ポイント

  • 実際の運用では**「発生量」=CO₂供給量ではない**。
    • 換気と送風によりCO₂は逃げるため、実際の室内CO₂濃度は制御対象となる。
  • 密閉条件下ではCO₂濃度が数万ppmを超える可能性があるため、以下の設備が必要:
    • CO₂センサー
    • 換気ファン(定時 or センサー連動)
    • CO₂排出のための強制送風
    • 原基形成時にはCO₂をあえて排出してppmを下げる必要あり

以下に、白いキクラゲ栽培(4,000菌床、空間80m³)における自動環境調整:

CO₂制御スケジュールの例(タイマー式 / センサー連動)

CO₂濃度維持のための送風量の計算


✅ 1. CO₂制御スケジュールの例

■ 成長期別:CO₂濃度の目標と制御方式

成長期目標CO₂濃度(ppm)推奨制御方式備考
接種~菌糸伸長期1,000~2,000ppmタイマー式(CO₂供給)適度なCO₂保持で菌糸伸長促進。換気は少なめ。
菌糸熟成期800~1,500ppmセンサー連動(CO₂排気)発生量増加に伴うCO₂過剰を排気で抑える。
原基形成期400~800ppmセンサー連動(換気)原基形成のトリガーにCO₂急低下が効果的。換気強め。
子実体成長期800~1,200ppmセンサー連動(CO₂供給・換気)換気とCO₂添加をバランス制御。風と湿度も重要。
収穫直前期800~1,500ppmタイマー式 or 弱連動成長維持と品質安定を目的にCO₂供給抑制め。

■ 例:センサー連動スケジュール(CO₂センサー値に基づく)

CO₂濃度(ppm)アクション
>1,500ppm排気ファン ON(5分間)
<700ppm(子実体期)CO₂供給 ON(最大10分)
700~1,200ppm何もしない(維持範囲)

■ 例:タイマー式CO₂供給(ボンベ or 発酵槽併用)

時間帯CO₂供給時間備考
6:00~10:00毎時5分間光合成活性+子実体成長促進
10:00~18:00毎時10分間成長ピーク時間帯
18:00~翌朝停止 or 微量供給過剰蓄積を避ける(自然放出優先)

✅ 2. CO₂濃度維持に必要な送風量の計算

■ 基本式:


■ 例:菌糸熟成期(CO₂発生量 約500g/h)

  • 目標室内濃度:1,000ppm(= 約1.8g/m³)
  • 外気CO₂濃度:400ppm(= 約0.72g/m³)
  • 濃度差:1.08g/m³
👉 空間全体が80m³なので、約5.8回/時間の換気が必要。

■ 現実的な設計値

  • ファン能力:500~600 m³/h の送排気ファンが適当
  • インバーター制御 or 間欠動作で過換気・乾燥を防止
  • 強風が必要なのは原基~子実体期、他の時期は換気量を落とす

✅ 推奨構成まとめ

機器内容
CO₂センサーNDIR式、0~5,000ppm計測
排気ファン600m³/h × 1台、インバータ制御可
給気口 or 給気ファンパッシブまたは強制吸気方式(逆流防止あり)
CO₂供給装置液化ボンベ or 発酵発生槽+タイマー弁制御

シン・キクラゲ(4,000菌床)栽培における各栽培期におけるCO₂ボンベの必要性

「必要性の有無・目的・代替手段」などとあわせて表にまとめました。

✅ 各栽培期におけるCO₂ボンベの必要性まとめ表

栽培期CO₂発生量(自然)CO₂濃度の目標CO₂ボンベの必要性目的備考・代替手段
① 接種~菌糸伸長期低(1~2g/菌床/日)1,000~2,000 ppm△ 必要に応じて菌糸活着促進、成長速度UP高密度環境なら自然発生分で足りる可能性あり。CO₂発酵槽でも代替可。
② 菌糸熟成期中(2~3g/菌床/日)800~1,500 ppm✕ 不要通常、内部発生で十分ボンベ供給は不要。むしろ排気ファンで過剰CO₂を排出する方が重要。
③ 原基形成期高(3~4g/菌床/日)400~800 ppm(低下がトリガー✕ 不要(むしろ排気)CO₂を下げて原基形成を誘導この時期はCO₂除去が最優先。ボンベ使用はNG。
④ 子実体成長期非常に高(4~5g/菌床/日)800~1,200 ppm○ 必要(濃度維持用)品質・肥大促進排気による濃度低下を補うため、濃度維持目的で使用可。ボンベ or 発酵槽。
⑤ 収穫直前期中(2~3g/菌床/日)800~1,500 ppm△ 状況に応じて成熟維持、品質安定発生量で足りない場合のみ補助的に使用。CO₂添加は軽めでよい。

✅ 使用判断まとめ

  • ボンベ必須④子実体成長期
  • 状況に応じて必要:①接種期、⑤収穫直前期
  • 不要(逆に排気が重要):②菌糸熟成期、③原基形成期

✅ CO₂供給の代替手段

代替手段特徴
糖蜜+イースト菌による発酵槽安価で長期間CO₂発生、温度制御が必要
醗酵おがくず or 馬糞堆肥反応槽低コスト、雑菌混入に注意
呼吸活性の高い他菌類の併用栽培例:キクラゲ+エノキタケなど

さらに、CO₂ボンベの使用量予測(m³単位)やボンベサイズ別の運用シミュレーションも可能です。必要であればご依頼ください。

白いキクラゲの菌床栽培(4,000菌床)における1回の収穫量および年間収穫量


✅ 1:前提条件(業務用白キクラゲ栽培の標準値)

項目標準値・範囲
1菌床あたりの生キクラゲ収量150~250g(1回あたり)
1菌床の再収穫回数年間平均 3~4回(2回以上安定収穫可能)
ロス率(成長不良・病気など)約10%を見込むのが安全

✅ 2:1回あたりの収穫量(4,000菌床)

  • 平均収量:200g/菌床
  • 有効菌床数(90%):4,000 × 0.9 = 3,600菌床
  • 3,600菌床 × 200g = 720,000g = 720kg(1回あたり)

✅ 3:年間収穫量の計算

パターン収穫回数年間総収量
保守的(年3回)3回720kg × 3 = 2,160kg(= 約2.16トン)
通常(年4回)4回720kg × 4 = 2,880kg(= 約2.88トン)
最大(年5回)5回720kg × 5 = 3,600kg(= 約3.6トン)

✅ 結論(標準想定)

  • 1回の収穫量(実効ベース):約720kg
  • 年間収穫量(実効)
    • 2.1~2.9トン(年3~4回収穫時)
    • 最大で 3.6トン/年 も可能(優良条件下)

栽培室に適した給気口、換気扇、加湿器、エアコン、栽培照明の容量と推奨機器(メーカ・品番)

シン・キクラゲ栽培室(4 m × 8 m × 2.5 m ≒80 m³)に合わせた設備仕様・推奨機器

区分必要能力(算定根拠)推奨機器(メーカー/型番)定格・主要仕様メモ
給気フード≥ 200 m³ h-¹(8回換気相当 640 m³ h-¹ の 30 % を自然給気で確保)Panasonic サイクロン給気フード FY-CUX04給気風量 200 m³ h-¹、防虫・防雨構造自然給気+換気扇強制排気の組合せで室内を弱陰圧に保つ
換気扇≥ 640 m³ h-¹(80 m³ × 8回 h-¹)三菱電機 標準換気扇 EX-30EH5羽根径 30 cm、風量 1 200 m³ h-¹/50 Hz、騒音 37.5 dB風量に余裕があり、タイマー or CO₂センサー連動で間欠運転しやすい
加湿器≈ 5 L h-¹(換気損失 640 m³ h-¹ × ΔW 7 g m-³ → 4.5 kg h-¹)Condair EL05 電極式スチーム加湿器出力 5 kg h-¹(≒ 5 L h-¹)、単相 230 V蒸気式は高菌床密度下でも清潔・メンテ容易。日本国内は輸入代理店経由で手配可
エアコン冷房目安 4 kW(内部発熱〈LED 0.2 kW+人員〉+外気負荷を含め 60 W m-²)ダイキン 天井カセット S40 系(シングルフロー)冷房能力 4.0 kW(0.6-7.6 kW 可変)、R32冷媒吸排気ダクトと独立配置し、結露防止で設定 25 °C/RH 90 % 運転可
栽培照明約 160 W(≒ 5 W m-²)(白キクラゲは 50-200 lux 程度で良好)VegeLEDS 1200 mm 白色タイプ(アグリライト研究所)× 4 本出力 26-72 W/本(38 W で PPFD 200 µmol m-² s-¹ @200 mm)、調光可4 本×38 W=152 W で必要照度を確保、低光量時は26 W設定で省エネ

設計のポイントと計算メモ

  1. 換気・給気
      • キクラゲ栽培では CO₂ 1 000 ppm 以下を維持するため 6-8 ACH が目安。80 m³ × 8 ACH → 640 m³ h-¹。
      • 給気は自然給気フード(30 % 程度)+ファン排気で弱陰圧を作り、胞子拡散を抑制。
  1. 加湿量の算定
      • 25 °C 飽和絶対湿度 ≈ 23 g kg-¹。RH 90 % 目標、外気(RH 60 %)との差 ΔW ≈ 7 g m-³。
      • 損失水分 = 換気風量 × ΔW = 640 m³ h-¹ × 0.007 kg m-³ ≈ 4.5 kg h-¹ → 5 L h-¹機で余裕。
  1. 空調容量
      • 外壁断熱前提で 60 W m-² を採用:32 m² × 60 W m-² ≈ 1.9 kW。
      • 加湿潜熱・LED・人(≈ 1 kW)を加え 3-4 kW が安全域。可変出力 4 kW 機を選定。
  1. 照明設計
      • 白キクラゲは暗所菌だが、発生期に 50-200 lux(≒ 10-40 µmol m-² s-¹)あると形状安定。
      • VegeLEDS 120 cm(38 W 時)で 200 µmol m-² s-¹/200 mm → 調光 30 % で十分。4 本配置で面均一性確保。
  1. 制御例
      • CO₂センサー連動:1 000 ppm で換気扇 ON、700 ppm で OFF。
      • 加湿器:湿度 88 % 以下で連続運転、92 % で停止。
      • 照明:発生期 06 : 00-20 : 00 で 30 % 調光、休眠期は消灯。
上記は 4 m × 8 m × 2.5 m 室を前提にした概算設計です。機器選定は在庫状況や設置方法によって変動しますので、導入時には販売店が提示する最新仕様を確認。