コンテナやプレハブ内での野菜栽培

結論

  • 栽培する作物を販売して事業収入を得ているかどうかで判断されるため、
    • コンテナやプレハブ内の水耕・人工光型「植物工場」でも農業(施設園芸)に該当し、
      所得税・消費税・労災など一般の農家と同じ扱いを受けられます。
  • ただし 「認定農業者」や農地取得・補助金・税制優遇を受ける場合は、
    • ▸ 施設をどこに置くか(農地内/宅地・工業地内)
      ▸ 農地法その他の許可・届出
      ▸ 面積・就農時間などの要件
      をクリアする必要があります。以下でポイントを整理します。

1 「農家」とみなされる2つのレベル

レベル主な根拠要件概要コンテナ/プレハブの場合
A = 一般農業者(税・統計上)食料・農業・農村基本法/日本標準産業分類①植物を栽培し販売収入がある②主たる業務時間を農業に充てている施設園芸も農業に含まれるためそのまま該当
B = 認定農業者(市町村認定)農業経営基盤強化促進法①5年間の〈経営改善計画〉を提出②年間400時間以上の農作業従事③おおむね10a(1,000 m²)以上の耕作地※施設内栽培面積や併設の耕作地を計画書に記載すれば認定実績あり(人工光型植物工場での認定例多数)
※面積要件は自治体裁量で緩和可(市街地型・都市農業など)。

2 用地と建築に関する3つのパターン

パターン必要な手続きメリット注意点
① 農地の上に設置(ビニールハウスと同様に“農業用施設”扱い)農地転用不要 だが「農作物栽培高度化施設」の届出(農地法43・44条)で構造基準を満たすことが条件認定農業者・農業者年金・固定資産税(農業用施設特例)等の対象にしやすい施設撤去後に原状回復できる構造が必須/大規模でも日影・排水の影響審査あり
② 農地を転用して設置(コンクリート基礎など)農地法4条(自己転用)・5条(買借を伴う転用)の許可が必要構造自由度が高い転用後は農地ではなくなり、農地税優遇・農地取得権が使えない
③ 工業地・宅地など農地外に設置農地法関係不要。都市計画法・建築基準法を確認市街地で流通・雇用面が有利認定農業者面積要件を満たすために併せて農地を借りるケースが多い

3 認定を受けやすくする実務ポイント

  1. 経営改善計画書のコツ
      • 施設内の「棚段総作付面積(水平投影ではなく延べ面積)」を面積要件に参入できるかを事前に市町村農政課に確認。
      • 電力・養液コスト、販売先との契約、バックアップ体制(停電時対応など)を具体的に記載すると審査が通りやすい。
  1. 農業委員会との事前相談
      • とくにパターン①②では、設計図面と環境制御計画を持参すると判断が速い。
      • 立地が市街化調整区域の場合、都市計画法29条の開発許可が併せて必要になることが多い。
  1. 法人化の活用
      • 面積要件をクリアしにくい都市部では、複数の農地所有適格法人(旧:農業生産法人)が共同で農地を借地→施設を分散配置して認定を取る事例も増加。
  1. 補助金・金融
      • 「強い農業・担い手づくり総合支援交付金」「みどりの食料システム法 認定(みどり認定)」などは施設園芸を明確に対象に含む。
      • JA系資金よりも、地方創生関連の産業振興資金(工業系融資枠)の方が使いやすい自治体もある。

4 よくある質問

QA
農業委員会に“土を使わないから農業でない”と言われたら?農地法43・44条通知では人工光型施設も耕作とみなすと明記されています。該当条文を提示して再相談すると解決するケースが多いです。
固定資産税は安くなる?農用地課税(田畑評価)を受けられるのはパターン①のみ。コンテナを固定基礎で据えた場合は一般の償却資産課税になります。
農業共済(収入保険)は加入できる?JA共済の「収入保険」は施設園芸でも加入可能。天候リスクが低い分、等級が有利になる例があります。

まとめ

  • 商業目的で野菜を栽培すればコンテナ栽培でも“農業”
  • 農地に置くかどうかで必要な許可・税制が変わる。
  • 認定農業者や補助金を狙うなら〈経営改善計画+面積・時間要件〉に合わせて、農業委員会と早期に相談するのが最短ルートです。
具体的な自治体名・施設規模・作物が決まっているようでしたら、必要書類や補助金メニューをもう少し掘り下げてご案内できますのでお気軽にどうぞ!