シン・キクラゲの「乾燥 → 微粉末化」
株式会社G I F T
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以下は、白キクラゲ(Tremella fuciformis /白いキクラゲを含む)の主な有効成分(高分子多糖・ウロン酸・β-グルカン・アミノ酸・ビタミンD前駆体など)を極力損なわずに「乾燥 → 微粉末化」するまでの代表的な工程と推奨条件です。設備規模や製品規格に合わせて取捨選択してください。
1 原料準備
工程 | ポイント |
① 選別・洗浄 | 収穫後4 h以内に始めると酸化酵素の発現を抑制できる。泥や木片を除去し、5 ppm次亜塩素酸ナトリウムで1 min殺菌後、RO水で十分リンス。 |
② ブランチング(任意) | 95 ℃熱水 1–2 minで酵素失活・微生物低減。直後に5 ℃以下で急冷し色調変化を防ぐ。 |
2 乾燥技術の選択と設定
方式 | 有効成分保持率* | 代表条件 | メリット / デメリット |
真空凍結乾燥(FD) | 多糖保持 > 95 %、アミノ酸・ウロン酸も最良 | ・予冷 -40 ℃ 8 h・一次乾燥:棚温 -20 → -10 ℃(真空 ≤ 20 Pa)24 h・二次乾燥:20 ℃ 3 h、残水分 ≤ 4 % | 成分保存・膨潤性は最高。処理コストと時間が大。 |
マイクロ波真空乾燥+超音波前処理(US-MVD) | 多糖組成不変、乾燥時間70 %短縮 | ・超音波浴 40 kHz/300 W 10 min・MVD:0.03 MPa、2–4 W g-1、製品温度 < 50 ℃ | エネルギー効率が高く、凍結乾燥の半分以下のコスト。操作条件が狭い。 |
低温熱風+減圧(40 ℃ / –0.08 MPa) | 多糖保持 70–80 %程度。ポリフェノールやアミノ酸が部分分解。 | シンプルで設備投資小。色調変化・収縮が大。 | |
スプレードライ(抽出液専用) | 抽出多糖保持 85 %前後。 | ・熱水抽出液固形分 10 – 15 %・マルトデキストリン 5–10 %添加・入口 165 ℃/出口 85 ℃ | 粉が極めて均質(100–150 μm)。果汁・飲料グレードに最適。 |
- 保持率は報告値の中央値。原料差・設備差あり。
3 粉砕・分級
- 粗破砕:フリーズドライチップをピンミルで 0.5 mm。
- 低温微粉砕:液体窒素または冷凍空気を導入し、製品温度 < 30 ℃を維持しながらハンマーミルまたはジェットミルで 100–200 mesh(飲料用)/325 mesh(化粧品・カプセル用)へ。
熱発生を防ぐことで多糖の分子量低下とビタミンD前駆体の酸化を回避できる。
- 磁選・金属検出:SUS304以上の異物を除去。
4 品質維持のための仕上げ処理
処理 | 目的と指標 |
低温殺菌(γ線またはe-Beam 5–7 kGy) | 一般生菌数 < 1.0 × 10³ CFU g⁻¹、酵母・カビ < 1.0 × 10² CFU g⁻¹。熱による多糖損失を回避。 |
窒素置換・アルミ蒸着3層袋充填 | 水分活性 < 0.25、酸素 < 2 % v/v に保つ。遮光性でβ-グルカン劣化とビタミンD2酸化を抑制。 |
吸湿・酸素インジケータ封入 | ユーザビリティ向上。 |
5 工程全体フロー(例:フリーズドライルート)
6 推奨モニタリング指標と例示値
項目 | 目標値 | 試験法 |
水分含量 | ≤ 4 % | 常圧加熱乾燥法 |
多糖含量(総糖) | ≥ 25 %(w/w d.b.) | フェノール-硫酸法 |
β-グルカン | 定格品なら ≥ 5 % | 酵素法 |
ビタミンD₂ | 200–400 IU g⁻¹ | HPLC(UV 265 nm) |
粒度分布 | D₅₀ < 60 μm | レーザー散乱 |
7 コストとスケールの目安
設備規模 | 凍結乾燥コスト | MVDコスト | 備考 |
パイロット 10 kg batch | 8–10 USD kg⁻¹(電力 120 kWh kg⁻¹) | 4–5 USD kg⁻¹(電力 45 kWh kg⁻¹) | 消耗品含まず |
産業 200 kg batch | 5–6 USD kg⁻¹ | 2–3 USD kg⁻¹ | 24 h運転時 |
まとめ
- 最高品質優先 ➜ 真空凍結乾燥→低温粉砕。多糖やウロン酸を 95 %以上保持し、再水和性も良好。
- コスト/時間優先 ➜ 超音波前処理+マイクロ波真空乾燥。成分保持と経済性を両立。
- 飲料・サプリ向け抽出物 ➜ ホットウォーター抽出→スプレードライ。キャリアを加えれば流動性と水分活性を制御しやすい。
工程設計時は 「製品グレード(食品・化粧品・医薬)」と「必要なポリサッカライド規格値」 をまず定義し、それに合わせて乾燥方式と最終粉砕粒度を選択するのが最適です。