
例:イチゴ栽培に適した環境設定

水耕栽培「一般的なイチゴ」のEC調整制御の適正設定値
イチゴは、EC 1.2〜1.8 mS/cm の範囲で最適に成長します。
糖度と酸味のバランスを調整し、高品質な果実を収穫するためには、ステージごとにECを調整することが重要です。
以下に推奨設定値を示します。
EC調整制御の推奨設定値
設定項目 | 推奨値 | 理由・説明 |
1. 投入開始値 (mS/cm) | 1.4 | 1.4未満になると、窒素・カリウムが不足し、生育不良になる。 |
2. 投入停止値 (mS/cm) | 1.6 | 1.6で停止することで、**最適範囲(1.2〜1.8)**を維持。 |
3. 上限警報値 (mS/cm) | 1.8 | 1.8を超えると塩類濃度が高くなり、根の浸透圧ストレスが発生。 |
4. 下限警報値 (mS/cm) | 1.2 | 1.2未満になると、栄養不足で果実の品質が低下する。 |
5. ポンプON継続秒数 (秒) | 30秒 | 短時間のONで微調整し、急激なEC上昇を防ぐ。 |
6. ポンプOFF継続秒数 (秒) | 600秒(10分) | 養液が十分に攪拌される時間を確保。 |
7. 投入指示回数制限 (回/日) | 20回/日 | 1時間あたり1回以下のペースで投入し、安定したEC管理を実現。 |
8. 肥料1タンク容量 (L) | 50L〜100L | 窒素・カリウム系肥料用。システム規模に応じて選定。 |
9. 肥料2タンク容量 (L) | 50L〜100L | カルシウム・マグネシウム系肥料用。補充の手間を減らすための容量を確保。 |
設定値の理論的根拠
- イチゴは、1.2〜1.8 mS/cm の範囲で最適に成長し、それを維持することで、果実の糖度が安定し、酸味のバランスも保たれる。
- ECが1.2未満になると、栄養不足で果実が小さくなり、酸味が強くなる。
- ECが1.8を超えると、塩類濃度が高くなり、浸透圧ストレスで根が傷む。
- 苗期: 1.2〜1.4 mS/cm(窒素を控えめにして根の発育を促進)
- 生育期: 1.4〜1.6 mS/cm(窒素とカリウムをバランス良く供給)
- 収穫期: 1.6〜1.8 mS/cm(糖度を高めるため、カリウムを強化)
段階別の調整方法
1. 苗期(定植後〜2週間)
- 投入開始値: 1.2 mS/cm
- 投入停止値: 1.4 mS/cm
- ポンプON継続秒数: 20秒 / OFF: 600秒
2. 生育期(2週間〜開花)
- 投入開始値: 1.4 mS/cm
- 投入停止値: 1.6 mS/cm
- ポンプON継続秒数: 30秒 / OFF: 600秒
3. 収穫期(開花〜収穫)
- 投入開始値: 1.6 mS/cm
- 投入停止値: 1.8 mS/cm
- ポンプON継続秒数: 30秒 / OFF: 600秒
調整のポイント
- ECの急激な変動を防ぐため、ポンプのON時間は短く、OFF時間は長く設定。
- ECの安定化には、温度・pHの管理も重要。
- 水温:18〜22℃(これ以上高いとECが濃縮する)
- pH:5.8〜6.2(最適な栄養吸収のため)
- 肥料タンクを2系統(肥料1・肥料2)に分けて投入することで、ECバランスを細かく調整可能。
まとめ:推奨設定の再掲
設定項目 | 推奨値 |
投入開始値 (mS/cm) | 1.4 |
投入停止値 (mS/cm) | 1.6 |
上限警報値 (mS/cm) | 1.8 |
下限警報値 (mS/cm) | 1.2 |
ポンプON継続秒数 (秒) | 30秒 |
ポンプOFF継続秒数 (秒) | 600秒(10分) |
投入指示回数制限 (回/日) | 20回/日 |
肥料1タンク容量 (L) | 50L〜100L |
肥料2タンク容量 (L) | 50L〜100L |
追加アドバイス
- ECセンサーの定期キャリブレーション(2週間に1回) を実施することで、正確な測定を継続。
- pH管理(5.8〜6.2) も併せて行うことで、栄養素の吸収効率を最適化。
- 水温管理(18〜22℃) と組み合わせることで、根の活性を保ち、安定した成長を実現。
この設定を基準にして、栽培環境(温度・湿度・光量)やシステム(NFT・DFTなど)に応じて微調整してください。
さらに、自動化システムとの連携やリアルタイムのEC・pH管理を行うことで、高品質なイチゴの安定生産が可能です。
水耕栽培「一般的なイチゴ」のpH調整制御の適正設定値
イチゴは、pH 5.5〜6.5 の範囲で最適に成長します。
特に、カルシウム・マグネシウムの吸収に敏感であるため、pH 5.8〜6.2 を中心に安定させることが重要です。
以下に推奨設定値を示します。
pH調整制御の推奨設定値
設定項目 | 推奨値 | 理由・説明 |
1. pH上限警報値 (pH) | 6.5 | 6.5を超えると鉄・マンガンの吸収が低下し、黄化症が発生する可能性がある。 |
2. pH下限警報値 (pH) | 5.5 | 5.5未満になるとカルシウム・マグネシウムの吸収が過剰になり、障害果が発生しやすい。 |
3. 酸投入開始値 (pH) | 6.2 | 上限に近づく前に投入開始して、急激なpH変動を防ぐ。 |
4. 酸投入停止値 (pH) | 6.0 | 最適pH 5.8〜6.2の範囲に収めるため、調整後のpHを6.0に設定。 |
5. 酸ポンプON継続秒数 (秒) | 30秒 | 短時間のONで微調整し、急激なpH変動を防ぐ。 |
6. 酸ポンプOFF継続秒数 (秒) | 600秒(10分) | 酸が均一に養液に混ざるための拡散時間を確保。 |
7. 酸投入指示回数制限 (回/日) | 20回/日 | 1時間あたり1回以下のペースで、過剰なpH調整を防ぐ。 |
8. 酸タンク容量 (L) | 50L〜100L | 栽培面積に応じて、定期的な補充を避けるための容量を確保。 |
9. アルカリ投入開始値 (pH) | 5.7 | pHが下限に近づいた段階で調整開始。 |
10. アルカリ投入停止値 (pH) | 5.9 | 5.8〜6.2の最適範囲に戻すため、控えめな調整を実施。 |
11. アルカリポンプON継続秒数 (秒) | 30秒 | 小刻みに調整することで、pHの急激な変動を防ぐ。 |
12. アルカリポンプOFF継続秒数 (秒) | 600秒(10分) | アルカリが均一に養液に拡散するための時間を確保。 |
13. アルカリ投入指示回数制限 (回/日) | 20回/日 | 過剰なpH上昇を防ぎ、安定化。 |
14. アルカリタンク容量 (L) | 50L〜100L | 酸と同等の容量を確保して、安定した供給を実現。 |
設定値の理論的根拠
- イチゴは、カルシウム・マグネシウムの吸収に敏感であり、pHが5.5未満になると過剰吸収が発生しやすい。
- 一方、pHが6.5を超えると鉄・マンガンの吸収が不足し、黄化症や生育不良を引き起こす。
- pH 5.8〜6.2 の範囲で栽培することで、バランス良く栄養を吸収し、甘味の強い果実が得られる。
調整のポイント
- 酸・アルカリのポンプ動作を短時間・高頻度にすることで、pHの急変を抑制。
- 日中(光合成活発時)はpHが上昇しやすく、夜間はpHが低下しやすいため、日中に酸、夜間にアルカリを投入する設定が有効。
- 収穫前の1週間はpH 6.0を維持することで、甘味が強く酸味が適度な果実に仕上がる。
運用のアドバイス
- pHセンサーの定期キャリブレーション(2週間に1回)を実施。
- EC管理(1.2〜1.8 mS/cm) と併用することで、栄養バランスを最適化。
- 水温管理(18〜22℃) も併せて行うことで、根の吸収効率を高めて安定した生育が可能。
まとめ:推奨設定の再掲
設定項目 | 推奨値 |
pH上限警報値 (pH) | 6.5 |
pH下限警報値 (pH) | 5.5 |
酸投入開始値 (pH) | 6.2 |
酸投入停止値 (pH) | 6.0 |
酸ポンプON継続秒数 (秒) | 30秒 |
酸ポンプOFF継続秒数 (秒) | 600秒(10分) |
酸投入指示回数制限 (回/日) | 20回/日 |
酸タンク容量 (L) | 50L〜100L |
アルカリ投入開始値 (pH) | 5.7 |
アルカリ投入停止値 (pH) | 5.9 |
アルカリポンプON継続秒数 (秒) | 30秒 |
アルカリポンプOFF継続秒数 (秒) | 600秒(10分) |
アルカリ投入指示回数制限 (回/日) | 20回/日 |
アルカリタンク容量 (L) | 50L〜100L |
この設定を基準にして、環境条件(温度・湿度・光量)やシステム(NFT・DFTなど)に応じて微調整してください。
水耕栽培「一般的なイチゴ」の水温管理の適正設定値
イチゴは、18〜22℃ の水温範囲で最適に成長します。
水温が高すぎると根腐れ、低すぎると栄養吸収の低下を招くため、適切な管理が必要です。
以下に推奨設定値を示します。
水温管理の推奨設定値
設定項目 | 推奨値 | 理由・説明 |
1. 水温上限警報値 (℃) | 24℃ | 24℃を超えると根腐れや酸素不足のリスクが高まる。特にピシウム菌(根腐れ病)の繁殖が促進されるため警告を設定。 |
2. 水温下限警報値 (℃) | 16℃ | 16℃未満になると、根の代謝が低下し、栄養吸収が鈍化するため警告を設定。 |
設定値の理論的根拠
1. 水温上限警報値 (24℃)
- 24℃を超えると溶存酸素量が急激に減少し、根が酸素不足になりやすい。
- 25℃以上では、**ピシウム菌(根腐れ病)**が発生しやすく、根の腐敗が進行する。
- 高温時には害虫(アブラムシなど)が増加するため、病害虫リスクも高まる。
- 夏季や高温環境では、23℃に設定してより厳しく管理することが推奨。
2. 水温下限警報値 (16℃)
- 16℃未満になると、根の代謝と栄養吸収が低下し、成長が遅くなる。
- 15℃以下では、葉の生育が鈍化し、果実の着色が遅れる。
- 低温により、葉が硬くなり、品質が低下する可能性がある。
- 冬季や低温環境では、17℃に設定して栄養吸収を促進する。
季節・環境による微調整
1. 夏季・高温環境(25℃以上)
- 水温上限警報値: 23℃(リスクを軽減するため厳しめに設定)
- 冷却装置(ウォーターチラー)・断熱シートを利用して水温を管理。
2. 冬季・低温環境(20℃以下)
- 水温下限警報値: 17℃(根の活性を保つため、やや高めに設定)
- 水中ヒーター を導入して水温を維持。
- 養液タンクの断熱対策を行うことで温度低下を抑制。
調整のポイント
- 水温が高くなる昼間は冷却を優先し、夜間は保温を優先することで安定化。
- 冷却・加温の自動化システムを利用して、リアルタイムな水温管理を行うと効果的。
- 温度センサー を用いて、水温の変動を±1℃以内に保つことで、イチゴのストレスを軽減する。
- 日中は22℃前後、夜間は18℃前後を維持することで、光合成と呼吸のバランスを最適化できる。
運用のアドバイス
- 水温センサーの定期キャリブレーション(2週間に1回)を実施して、正確な測定を維持。
- 水温が22℃を超えた場合、エアレーション(酸素供給) を強化して、酸素不足を防止する。
- EC管理(1.2〜1.8 mS/cm) および pH管理(5.8〜6.2) と連動させて、養液の安定性を向上。
まとめ:推奨設定の再掲
設定項目 | 推奨値 |
水温上限警報値 (℃) | 24℃ |
水温下限警報値 (℃) | 16℃ |
追加アドバイス
- 夏季は23℃、冬季は17℃ に微調整して、環境に応じた最適管理を行う。
- 冷却・加温の自動化システム と連動させて、リアルタイムな水温管理を実現。
- EC・pH・水温のトリプル管理 を行うことで、安定した栄養吸収と生育が可能になる。
この設定を基準にして、栽培環境(温度・湿度・光量)やシステム(NFT・DFTなど)に応じて微調整してください。
最適な養液流量速度
植物の種類 | 推奨流量速度 (cm/秒) | 最適なポンプON/OFF時間 |
イチゴ(果実系) | 1.0〜2.0 cm/秒 | 30秒 ON / 10分 OFF |
